第32回伝統芸能サロン「組踊の芸をつなぐ」

 国立劇場伝統芸能情報館で開催されている伝統芸能サロンの第32回目は「組踊の芸をつなぐ」だった。時間に都合がついたのでこれは是非聞きにいかないとと。講師に島袋光晴、聞き手に宮城茂雄登場。お二人とも舞台で踊っていたり、組踊に出ているのは何度か拝見しましたが、こうやってお話をされるのを聞くのは初めてです。といういか、すっぴん(笑)のお二人を見るのも初めてかも。袴姿だったので普段着ではなかったけど。

 組踊の歴史から、どうやって鑑賞するか「唱え」「所作」の観点からの決まり事や、すべてが舞踊から発展しているというお話はとてもわかりやすく、色々繋がっているんだってことが良くわかった。結構ロジック的な様式美ワールド。そこが分かってくると面白さ倍増は自明の理。
 舞台を観に行ったり、本を読んだりするだけでなく、こういったお話を直に聞く機会はとても面白い。NHKの沖縄放送局ではいろいろな番組が流れていてうらやましい。「にっぽんの芸能」でもやってくれればいいのになぁ。そのうち取り上げられないかしら?

 最初、宮城茂雄が若松の登場の口上をもじって登場、「わんや、うちなーの…」と。出て来ていきなり唱えで始まったので何が始まるのかと思いましたが、ご挨拶でした。つかみはおっけー!ww
 組踊に関する歴史の話が最初にあり、琉球処分の後王朝が瓦解して芸能を行っていた氏族も職を失って…というところから明治の初期にどう伝承されていったかとか、どういう人たちが居たかなどの話が続くのですが、ここで名前が出てくる人たちは島袋光晴にとってはリアルに存在していたわけで、ぐぐぐっと現実味を帯びて話が浮かび上がってきて当たり前だけど本で読んだりするのとは違うなぁ〜と。

 歴史の話が一段落したところで映像を観て下さいと島袋光晴演じる「波平大主道行口説」を鑑賞。おぉ〜、素晴らしい。

「唱え」は、文語体であり、歌言葉であり、組踊口調と言われる。首里方面のイントネーション(那覇とは流れの抑揚がちがう)で発音される。
若衆は語尾がまっすぐに下がる。「わんや」と短くはっきりと言う。
女性は語尾が回って上がって下がる。「わーんや」やわらかくちょっとゆったり言う。強吟は例えばあまおへとかの男性の唱えの場合。力強く。和吟は子供など。そして老人は、老人ならではの独特の節回しがある。
 と、実演をまじえて紹介。なるほど〜、実演付だとほんと良くわかる。

 実演では「執心鐘入」で若松が座主に助けを求めるシーンと、「花売りの縁」で乙樽が樵に森川の子のことを訪ねるシーンがありました。
 島袋氏の話では執心鐘入の座主は、とても難しいとのこと。メイクは少し目尻が下がって弱そうに見えるのに対して、包容力のある唱えで守る力のあるところも見せないとで、と。へぇ〜、4月1日に「執心鐘入」は観るから注目してみよう。結構前の方の席が取れてるので、メイクとか表情も分かりやすいでしょう。

「所作」。
必ず上手に身分の高い人、下手に身分の低いものが位置する。
偉い人は、きょうちゃこ(椅子)に座る。
舞台を一周すると目的地に到着。

 舞踊の場合、女性は右足を軸左足を出して立ち、基本左回りでまわる。対して男性は、左足を軸に逆八の字で立ち、右回りでまわる。舞台の上の動きも、男性の踊りの手の動きも同じパターン。四方の縦と横の動きと斜めを切る動き。その組み合わせ。
 組踊の間合いとやりとりは、舞踊の基本を踏襲しているので思い入れの「面掛け」によって感情を表現する。つまり舞踊がすべての基本となる。など、など、など。へぇ〜、というとても為になるお話がてんこ盛りであっと言う間に時間が過ぎてしまいました。こういう機会を得ることができて大変ありがたいです。感謝です。また見つけたら聞きに行ってみようと。

 さて、3月3日(土)は「父子忠臣の巻」を国立劇場おきなわに観に行きまふ。ここで聞いた話を頭の片隅に置きながら鑑賞してみましょう〜。いや、しっかしこの組踊なんか男くっさいわぁ〜と言ったら兄弟子のO村に「いや、そもそも立方男しか出ないし」と。そんなん百もわかってるわー、ストーリー上のこと言ってんねや。男子って、そーゆーところロマンが無いのよねぇww